はじめに
人物撮影の経験を積みたくてポートレートやコスプレの撮影をしていた時期がありました。
3年前くらい前がメインで、そこから活動は縮小してはいるのですが、
恐らく未だに通用する技術ではあると思うので、撮影手法や考え方について記しておこうと思います。
長い記事ではありますが、上から下まで読むと、ポートレートやコスプレ撮影の内容や、ざっくりとした手法、技術などが分かるようになっていると思います。
前提・考え方
撮影の目的
とりあえずは、参加の敷居が低いコスプレのイベントのケースで書きます。
※私は、人間を撮影したく、最初はイベントへ参加していました。
写真を撮る側の目的ではなく、「写真を撮られる側の目的」を考えると…
基本的には、「自分の写りの良い写真が欲しい」「同じ趣味の仲間と仲良くなりたい」などがイベント参加の主目的かと思います。
被写体と既に仲の良い方は別に良いと思いますが、野良カメラマンと呼ばれるイベントに勝手に生えてくるカメラマンの存在意義は、「写りの良い写真を提供する」のみです。
それ以外(例えば被写体と仲良くなろうとか、アフター※イベント後に遊ぼう等とは)考えない方が良いです。彼女たちは、下心には敏感です。
まずは、自身が求められていることが何か理解し、提供する所から関係性を構築するしかありません。
もちろん、有償の撮影会などは別の目的(金銭)である事が明白なので、あくまで相互無償での撮影を前提に考えています。
現像・補正・加工する”前提”で撮影する
昨今のポートレートやコスプレ撮影は(特に女性被写体の場合は)現像や加工ありきの撮影となる前提で考えた方が良いです。
よくイベント会場などで、撮影直後にカメラの液晶を被写体に見せる方がいらっしゃいますが、個人的には「現像して、嫌味じゃない程度に加工してから、被写体のスマホで見た」状態を100%にもっていくべく、撮影を行います。
つまり、撮影直後の写真は表には出ませんし、被写体から要求されない限りは見せる事もありません。
ただし、往々にして撮影直後の歩留まりが良い写真は、現像や加工が非常に楽なので、そのように設定を追い詰める理由も理解できます。
撮影から写真提供までの流れ
コスプレイベント撮影の場合
1.イベントへ参加する
ググると、さまざまなイベントがあります。
個人的には、初心者はアコスタが宜しいかと思います。
私の勝手な印象ですが…
・TFTは機材での殴り合い(高価な機材や、ライティングマスターが多い)
・TDCは、コスプレイヤー同士で遊ぶ割合が多い(野良カメラマンの敷居が高いイベントです)
・コミケは人が多すぎる(ただし、公園での撮影はお勧め)
・それ以外のイベントは、そもそも仲間内で遊んだり、被写体の方でカメラマンを事前に募集したりするものが多いです。
2.被写体へ声を掛けて、撮影許可を得る
一番敷居が高く見えると思いますが、
実はここが一番敷居が低いです。
何故なら、先ほどの参加目的を考えたときに、
「自分の写りの良い写真が欲しい」
といった所から考えると、よっぽど変な声のかけ方でなければ、写真を撮られたい方が多いので、
基本的に断られる事はほぼありません。
もちろん、専属カメラマンが幅を利かせていたりするケースだと断られる可能性もありますが、
声を掛けるのはタダです。
3.撮影して、Twitter等のアカウントを聞く
「自分の写りの良い写真が欲しい」
とありましたが、撮影した写真は被写体に送らないと、これが実現されません。
自分が写真の練習をしたいから…と、撮影だけして写真を渡さないのは、個人的にはフェアではありません。双方WinWinになるために、撮影した写真は渡してあげた方が良いです。
撮影のコツなどは、後述します。
4.その場を去る
長居はしないでください。
先ほどの「自分の写りの良い写真が欲しい」目的を達成するには、複数の人に撮影して、より良い写真を受け取るための打率を上げる方が多いです。
もちろん、既に仲良くなった被写体とは、好きに絡んで頂いて良いと思います。
5.現像して、写真をTwitter等で送る
現像に関しては、それだけで記事が何本か書けそうな勢いなので、細かいことは割愛しますが…。
私がやっていることは、CameraRawで色味やホワイトバランス、明るさを調整した後、PhotoShopで肌の調整、輪郭の微調整などをしています。
慣れると、1枚数分程度でできる作業です。
現像後、被写体へDMで写真を送ります。
よくリプライで送っている方がいらっしゃいますが、「被写体が納得した写真」のみ公開したい層が厚いため、基本的にはDM送付の方がトラブルが少ないと思います。
ポートレート・個別撮影の場合
0.撮影実績を作る・被写体との信頼関係構築
いきなり、なんの撮影実績も無い人と1対1で写真を撮りたい人はいません。
どのような写真を撮ってくれるのか、などの作例や、その被写体とイベント等で会ったことがあるか…などの関係構築が前提となる場合が多いです。
ただし、写真のクオリティによっては、面識が無くても依頼が来るケースも考えられますが、多くのポートレートやスタジオコスプレ撮影カメラマンは、地道なイベントでの営業によって実現していると思った方が良いです。
1.被写体と調整する
どのような衣装で撮影するか、ロケーションはどこか、日程はどうするか…
など、すべてを決める必要があります。
スタジオで撮影する場合は、予約をする必要があります。
被写体にもよりますが、カメラマンの人権は低めなので、当日キャンセルされる場合も考えられます。
全てにおいて、0.の関係構築がものを言います。
2.撮影する
撮影します。
このあたりの技術は、いくつか記事が書けそうなくらいはありますが、後述します。
3.現像して、写真を送る
現像して写真を送ってください。
使っている撮影機材
よろしければ参考にしてみてください。
SONY α9
今は、フルサイズのミラーレス一眼がお勧めです。
レフ機で撮ってももちろん良いのですが、瞳フォーカスなどがあると、歩留まりが明らかに変わってきます。
SONYだと、α7 iiiくらいからが実用的だと考えます。
SONY 縦位置グリップ VG-C2EM
人物撮影では、個人的には必須。
カメラの安定度が上がるのもそうですが、縦位置構図を多用するためです。
FE 85mm F1.8
お手軽にきれいなポートレートやコスプレ撮影をしたいのであれば、このレンズを買えば間違いありません。
SONY(ソニー) 望遠単焦点レンズ フルサイズ FE 85mm F1.8 デジタル一眼カメラα[Eマウント]用 純正レンズ SE…
コストパフォーマンス抜群です。
屋外の1対1のポートレートやコスプレ撮影であれば、この一本でも撮影可能です。
tamron 35-150mm f2-2.8
ポートレート撮影における、今のところ一番有用な便利ズームです。
35mm F2.0で撮ってもよし。
80mm前後 F2.5で撮ってもよし
150mm F2.8でガッツリボカシてもよしの、良いとこどりレンズ。
値段と重量には要注意。
NISSIN Di700A+Air1
α7 初代の頃から愛用しています。
フットワークを軽くしたいイベントや、軽いスタジオ撮影には十分。
多灯ライティングは憧れますが、イベントでは重いし嵩張り、スタジオには大体撮影用のLEDライト(スタンド付き)が複数あるため、今のところ整備していません。
屋外で使うため、HSS(ハイスピードシンクロ)機能は必須です。
適当なディフューザー
ストロボ直あてだと、あまりにも光が固いので、このあたりで拡散させる。
屋内ならバウンスしてもよし。
作例と撮影手法メモ
被写体より、撮影時に掲載許可を頂いています。
不都合等ございましたら、ご連絡ください。
作例とともに、気を付けたポイントなどをコメントしています。
前提
基本的に縦構図で撮影しています
スマホ鑑賞がほとんどを占めるため、こういった写真は基本的に縦構図で撮影します。
(もちろん、例外もありますが…)
人間は縦に長い&スマホも縦に長いためです。
基本、逆光・半逆光で撮影しています
※屋内や、曇りの日はその限りではありません。
とにかく
・被写体の顔に不自然な影が入らないように
・輪郭(特に髪)にハイライトが入ると、透明感が出る
と信じて、そのように撮影しています。
あと、順光だと単純に被写体の目に太陽光がそのまま入るため、眩しいです。
眩しいと自然と目を細めてしまったりするので、順光は基本NGです。
RAW+JPGで撮影しています
SDが2枚刺せるため、高速なUHS-2の方にRAW、低速の方にJPGを保存するように割り振っています。
SDカード故障の際も、どちらかが生きていれば最低限の写真は渡せます。
露出補正 +0.5~0.7で撮影しています
このような写真は明るめに現像する事が多いため、事前に若干オーバー露出で撮影しています。
ただし、フルサイズのSONYセンサーであれば、アンダーの方が情報を持っているため、このあたりは状況によって設定を変えつつの撮影です。
ポートレート
バストアップは、85mmが一番活きてきます。
というのも、背景を強力にボカシつつ、被写体を浮き上がらせるような描写が手軽に得られるためです。
必ずしも表情がカメラを向いている必要はありません。
目線の方を少し空けるとバランスが取れて見えます。
全身が入った写真は必ず残すようにしてください。
被写体の多くは、頭から足の先まで手を抜いていません。
その街ならではの背景を探すのも、ポートレートで重要なポイントだと思います。
フルサイズのボケるレンズを使う場合、前ボケ、後ボケを意識した構図にすると良いです。
特に手すりは、視線誘導の効果を手軽に出せるのでお勧めです。
可能であれば、ポーズをお願いするバリエーションがあると良いと思いますが、
思いつかないときは、自由に動いてもらうのも有効です。
tamron 35-150mm f2-2.8のバストアップ。
単焦点とそん色なくきれいに写っていると思います。
コスプレ撮影
バストアップです。
これは、撮影時期がまだ模索段階だったこともあり、現像でかなりソフトフォーカスっぽくしてあります。
ただ、コスプレ撮影は過剰な加工や補正が許されがちなので、皆さんも許してください。
安直に手すりを使いました。
ボケすぎていて、視線誘導の効果があるか、もはや分かりません。
座ったりしゃがんでもらうと、寄った状態で全身を入れられます。
廃校になった後、コスプレ撮影で使えるように解放してあるケースもあります。
網を使って奥行を出そうとしていますね。
上手くいっているかは謎です。
これは、背景の整理に失敗した例です。
コミケの防災公園で撮影した写真なのですが、とにかく人が多いため、背景の整理に苦慮します。
しゃがんでもらって、少し上から撮ると、背景を地面にもっていくことができます。
こちらは上から撮っていますが、逆にローアングルから撮ると、顔のパースが狂ったりするケースがありますが、空を背景に入れやすくなるなどメリットもあります。
反射シリーズです。
ガラスがあれば、積極的に反射を使っていきましょう。
反射系を室内で撮ろうと思うと、85mmだとちょっと長くて使いづらいので、
50mmくらいの方が撮りやすいです。
スタジオだと、自分で光を作れます。
写っていない所に2灯光源があります。
現像について
前提
必ずRAWで撮影してください
現像では、明るさを調節する際に、アンダーを上げたり、ハイライトを下げたりしがちです。
その際に、写っていないように見えてもRAWであれば情報が残っていることがあります。
RAW現像は、人物撮影では必須だと思います。
美肌補正必須
被写体も人間なので、日々肌のコンディションは異なります。
我々が(あるいは被写体のスマホアプリ等の補正で)一定にするのです。
やり方はググるとたくさん出てくるので、皆さんがやりやすい方法をご活用ください。
最近は、PhotoShopのAI補正で肌をきれいにしてくれるようなので、お勧めです。
※素人の手動補正よりスマホアプリで補正した方がきれいになるケースがあります。
いろいろ試してみると良いと思います。
最後に
あくまで作例の一部ですが、比較的綺麗に撮れてはいると思います。(好みはあると思いますが)
皆さんも興味があれば、いろいろ試しつつ撮影に挑んでみてください。
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