はじめに
PENTAX Super Takumarは有名なオールドレンズです。
その前身、よりオールドなオールドレンズ「PENTAX Auto Takumar」を入手しました。
1960年製の「PENTAX Auto Takmar」
約65年前の写りをレビューしていこうと思います。
PENTAX Auto Takumar 55mm F1.8 基本情報
レンズタイプ | 単焦点レンズ |
焦点距離 | 55mm |
F値 | F1.8 – F16 |
マウント | M42スクリューマウント |
構成 | 5群6枚 |
最短撮影距離 | 45cm |
重量 | 215g |
フィルター径 | 49mm |
発売年 | 1960年(Auto Takumar 後期モデル) |
発売年 1960年について
当レンズが発売された1960年は、カラーテレビの放送が開始された年です。
当時のフィルムはまだまだ白黒がメインでした。
しかし、カラー写真でもとても良く色が出る、素晴らしい設計のレンズです。
東京タワーの竣工が1958年。
これは、Auto Takumar 前期型の発売年。
まさに、日本の高度経済成長を写し続けてきたレンズなのです。
当時の価格について
具体的な情報はありませんでしたが、個人のいくつかのサイトでSuper Takumarのカタログについて言及しているものがありましたので、あくまで予想値としてですが…
おそらく13000〜18000の間だったのでは、と思います。
今で考えると廉価だと思われるかもしれませんが、
当時の平均的な大卒初任給が13000円。
物価が現代と16倍程度差がありましたので、このレンズは1ヶ月分の給料と同程度したと考えられます。
PENTAX Auto Takumar 55mm F1.8 レビュー
操作感
Auto Takumarの後期型は、SuperTakumarと変わりません。
多くの方はミラーレスカメラに付けて楽しまれると思うので、実絞りでガンガン撮影できて機能的には十分だと思います。
ヘリコイドの重さも、当時はマニュアル操作前提だったので程よい重さです。
ストッピングも良く、MFは近代のレンズと比べ物にならないくらい良いです。
描写・写りについて
作例は、35mmフルサイズの「SONY α7 ii」にM42マウントアダプタを介して撮影しました。
場所は秋葉原。
街中のスナップに使用しました。
使用した機材
ソニー / フルサイズ / ミラーレス一眼カメラ / α7M2 / ボディ(レンズなし) / ブラック / ILCE-7M2
K&F Concept M42レンズ- Sony NEX Eカメラ装着用レンズアダプターリング レンズマウントアダプター マウン…
F1.8 解放の描写 (物撮り・ポートレートなど)
お手本のようなボケ方を手軽に作ることができます。
このレベルでボカしてあげれば、描写の甘さを有利に使えますね。
カラーコーンにめりこんでいる謎の反射板です。
このように、主体を際立たせるために開放F値で撮影するのはありがちだと思います。
撮影者の意図通り、忠実に描写してくれていると思います。
風景・スナップなど
風景写真は開放F1.8だと甘すぎてまともに描写されません。
これを味とするかどうかですが、私には耐えられない甘さです。
四隅どころか、画面中央あたりまで流れてしまっている気がします。
しかし、F4くらいまで絞ると…
くっきりシャープに映ってくれます。
この写真が60年以上前、カラーテレビー放送が始まった直後の白黒写真用のレンズだと気付く人は、あまり居ないと思います。
この「絞り開放」と「絞った時」の描写の差を楽しむのも、このレンズの醍醐味だと思います。
流石にこの時代の標準MFレンズなので、鳥撮影は困難ですが地面に落ちている鳩くらいであれば撮ることができます。
ピントの合っている箇所から、なだらかにザワザワボケていく感覚、決して綺麗なボケではないですが、心が騒つく描写だと思います。
綺麗で美しいことと、見た人の印象に残ることは全く別です。
このレンズでは、印象に残る写真が撮れるのだと思います。
上記の鳥あたりを拡大したのがこちら
結構解像していますね。
色乗りも悪くありません。
人工物
絞ればシャープに映るので、建物や線路、道路とも相性は悪くありません。
秋葉原の街並み
中央を拡大してみましたが、カリカリに描写できています。
空気感を出すのが上手いレンズだと思います。
世代的には、まだアトムレンズでは無いと思うのですが、絞った時の写りはSuperTakumarとあまり変わりません。
確か、F4くらいで撮影したと思うのですが、ピント面のキレが良すぎて、びっくりしました。
拡大したこの写真を見て、誰が60年以上前のレンズを使っていると思うでしょうか。
絞った時の描写は、まだ現役で使えるのでは…と思うレベルです。
物取りする人は、こういったレンズでも設定を追い込めば十分実用だと思います。
スナップで定番の落書き。
きちんとディテールも出ているし、かつ雰囲気も残しています。
近寄って撮影すると、ちゃんと背景はボケますね。
背景が人工物だと、あまり綺麗にボケない気がします。
※線ボケがあまり美しくない
このレンズを使って綺麗なボケを撮りたいのであれば、背景に光源を持ってくるなど球ボケを狙った方が良いと思います。
感想
このレンズの何が良いかというと「画角」と「ボケとシャープな描写の両立」にあると思います。
画角が丁度良い!
55mmはほど良い焦点距離で、標準レンズ50mmよりは範囲が狭いのでその分主題を持ってきやすく、印象に残る写真の打率が上がる気がします。
もしAPSCで使うとすると、焦点距離は82mm程度で中望遠レンズと同じような使い方ができます。
この普通と「ちょっとだけ」違う画角が、撮影して新鮮な気持ちにさせてくれるのだと思います。
現行レンズの55mmで有名なものだと、カールツァイスの以下のレンズが挙げられます。
ソニー / 標準単焦点レンズ / フルサイズ / Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA / ツァイスレンズ / デジタル一眼カ…
このレンズ、かなり評判が良いです。
いつかこのレンズがオールドレンズになった時、改めてレビューしようと思います。
ボケとシャープな描写の両立
・開放だとボケボケに写すことができる。
・少し絞れば、すごくシャープに映る。
同じレンズで、2度美味しいですね。
最近だと開放でもシャープに映るレンズばかりですが、
Auto Takumarは本当に甘い描写になって、隅は流れるしピントが合っていても若干滲むような描写の時すらあります。
逆光だとハレーションが起きるだけなら良いのですが、ディティールが持っていかれることも…。
しかし、それがオールドレンズの良さなのです。
甘い描写で遊べて、しっかり撮りたい時は少しだけ絞って撮影。
そのような使い方が良いように思います。
最後に
Super Takumarはオールドレンズとして非常に有名ですが、その前作Auto Takumarはあまり作例や使っている人がいませんでしたので、あえてマイナーなこのレンズをレビューさせていただきました。
普通にカメラ屋のジャンクコーナーに格安で転がっているので、もし気になった方がいらっしゃいましたら、是非手にとっていただければと思います。
ここまで書いておいてなんですが、
個人的には、描写のレベルが一段上がった、Super Takumarの方が良いです。
※ほぼ似たような写りをしますが、Super Takumarの方が開放F値の描写が優れていると思います。
絞り開放の甘さと、絞った時のシャープな画質のツンデレみたいな描写を味わいたい場合は、迷いなくAuto Takumarが宜しいかと思います。
気になる方は、ぜひ探してみてください。
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