はじめに
当カメラを購入したのは、2023年に入ってから。
新宿のカメラ屋に転がっていたボロボロの皮ケースに包まれていたNikomat FTNを救出しました。
持って帰って磨いたら、このカメラはずっと使えるのでは…と思わせるしっかりした作りに驚きました。
※まさに、この広告通り50mm F2の単焦点付きのカメラでした。
ニコマートFTN(Nikomat FTN)基本情報
発売年 | 1968年 |
シャッター性能/仕様 | B、1秒~1/1000秒 機械式縦走り金属幕フォーカルプレーンシャッター ストロボ同調速度1/125秒 |
露出計 | TTL開放中央重点測光 CdS受光素子 針式(中央合致) |
ファインダー | 0.86倍 |
マウント | ニコンFマウント |
電池 | MR-9水銀電池 x1 |
価格 | ボディのみで32,500円 50mm/f2付きで46,000円 |
販売年 1968年について
Nikomat FTNが発売された1968年は、以下のような出来事がありました。
・アポロ計画初の有人宇宙飛行計画 アポロ7号の打ち上げ
・川端康成ノーベル文学賞受賞
・3億円強奪事件発生
また、アポロ計画の影響か
・2001年宇宙の旅
・猿の惑星
など、有名なSF映画が生まれた年でもあります。
日本の高度経済成長の真っ只中に、たくさん売れた廉価カメラなので、球数も少なくありません。
よって、今でもリーズナブルな価格で入手が可能です。
当時の価格について
ボディのみで32,500円
50mm/f2付きで46,000円
参考までに、当時の大卒初任給は30600円。
(厚生労働省の調査が始まったのも、同年)
ボディだけで、給料1ヶ月分程度の価格だったと思われます。
ニコマートFTN(Nikomat FTN)レビュー
操作系など
フィルム巻き上げ・巻き取り
典型的なフィルムカメラの巻き上げ機構。
ただし、分割巻き上げはできません。
巻き上げ自体は重めなので、しっかり巻き上げる必要があります。
巻き取りもスタンダードなフィルムカメラと同様です。
後ろのストッパー解除ボタンを押し込んだ後、くるくる巻き取るだけです。
シャッター速度設定
Nikomat FTNは、特徴的なシャッターダイアルとなっています。
見ての通り、通常の場所にシャッターダイアルはありません。
実は、マウントの所に絞りリングのような形でシャッター速度の調整ダイアルがあります。
この操作系は賛否両論だと思いますが、結局は慣れだと思います。
持ち手を変えずに、フォーカスと絞りとシャッター速度をカメラを構えたまま操作できるため、
慣れれば快適に撮影できると思います。
絞り設定
レンズに絞りリングがあるよくあるタイプです。
特に特質した操作はありません。
ニコマートFTN(Nikomat FTN)の良いところ
しっかりした作りでとにかく頑丈
当時の日本光学(Nikon)が、初めて廉価機種として販売したカメラなのですが、廉価と言いつつ妥協を許さなかったのか、相当な作り込みです。
当時の日本の技術は素晴らしかったとは聞きますが、他社(PENTAX等)と比べても加工精度のレベルが違います。
まず、握った瞬間から剛性の高さを感じます。
(鉄のインゴットでも握っているのか…?というくらいに剛性が高い)
界隈ではよく鈍器と呼ばれており、ゲームキューブが出るまではこのカメラが鈍器1位だったに違いありません。
しかも鈍器として使われている可能性が高い中、故障している個体は相当少ないです。
さらに素晴らしいのは、コパルスクエアのシャッターを採用していること。
コパルスクエア製シャッターは、頑丈すぎて壊れない事で有名です。
少なくとも、私は壊れた個体を見たことがありません。
上記のような様々な理由が重なり、頑丈で壊れにくいカメラとしてその地位を獲得しています。
精度が高い
日本光学(Nikon)のカメラの素晴らしいところは、他社と比べて加工精度が高いこと。
長年使われてきたカメラは、やはりフランジバックの精度等怪しい個体も数多く、なんならPENTAX SPなどはワッシャーで個体ごとに調整しているケースがよくあります。
しかし、Nikomat FTNは、ワッシャーなど入っていません。
本体の加工精度が高過ぎて、個体毎の調整が不要なのです。
半世紀以上経っても壊れず、精度も出ているので、個人的には一番長く付き合えそうなカメラだと思っています。
幅広い世代のニッコールレンズが利用可能
・オートニッコール
・Aiニッコール
・Ai-Sニッコール
など、カニ爪がついているニッコールレンズは全て利用できます。
中古でも球数が多いので、レンズ交換も手軽に楽しめます。
ニコマートFTN(Nikomat FTN)の良くないところ
日常的に持ち歩くには重い
765gあります。
本体のみで1kg近いので、本当に鈍器です。
カバンにそっとしまって持ち歩くというより、ダンベルを手に持って体を鍛える気持ちで持ち歩きましょう。
フィルム室のロックレバーが特殊
通常のフィルム巻き取りレバーを持ち上げるタイプではなく、ボディサイドにある爪を下げてフィルム室を開きます。
勝手に引っかかって空くような弱さではないのですが、開けずらいのと、巻き取りクランクを持ち上げる方が原理的には理にかなっている(間違って開きづらい)と思うので、ここはマイナスポイントだと思います。
ただ、実用上は問題ありません。
設計の問題で、慣れでカバーできます。
フィルムの切れ端を入れる窓が無い
PENTAX MXをご覧ください。
その後、NIKOMAT FTNをご覧ください。
無いですよね!何かが!
そう。今フィルムを入れているのか、それとも入れていないのか
入れているとしたら、ISO何の何枚撮りか?といった情報を、本体に入れておくことができません。
複数フィルムカメラを運用している人からすると、この情報は結構大事なはず。
もちろん、マステで止めたりすれば保持できるのですが、折角なら窓をつけておいて欲しかったです。
Nikomat FTN 作例
新宿へ撮影しにいく機会がありましたので、作例を乗せます。
撮影に使ったフィルム
富士フイルム(FUJIFILM) フジカラー PREMIUM 400 27枚撮り 135 PREMIUM 400 27EX 1
※1年ほど期限切れのフィルムで撮影しています。
作例
絞って遠景を撮る分には、最近のカメラと変わらない精細さがあるとおもいます。
普通に「移りが良い」カメラの写真ですね。
56年前のカメラとレンズでこの写り。
Nikonのレンズが素晴らしいということがよくわかります。
カラーネガフィルムなら、こんな明暗差がある所でもかろうじて写ります。
ディティールは潰れていますが…
コクーンタワーを背景に、コップを撮影。
ピントをガラスの雫に合わせて。
綺麗にボケますね。
端に行くと、若干の口径食がありますが、まあ50年以上前のレンズなので。
近くを撮っても様になります。
水たまりは、絶好の撮影スポットです。
デジカメなら上手くとれるまで何度でも再撮影できますが、フィルムなので一発撮りです。
露出もほぼ完ぺきではないでしょうか。(FTNの指標針はあまり信用できない、かつ入れている電池の電圧が違うので、1段程度目測で明るく撮る必要がありました)
最後に
とにかく頑丈で、長く付き合えるカメラ。
しかも相場が安い!
と、中古カメラに中々求める事ができない要素が偶然にも重なっている稀有なカメラです。
ただ、いくら頑丈でもカメラである以上、カビには弱いので購入の際は必ずファインダー・シャッター幕等裏蓋内をご確認ください。
また、電池室が固着していると厄介です。
必ず底蓋のコンディションは確認した上で購入すると良いと思います。
しっかりした筐体で、末永く使える頑丈なカメラが欲しい人は、ぜひご検討ください。
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