はじめに
最近のフィルム現像代は恐ろしく高くなっております。
カラーネガの35mmであれば、どこでもすぐ現像できますが、
私が使っている120フィルム(ブローニー)は、当日帰ってこない。
ちなみにモノクロフィルムだと、依頼すると2、3週間掛かることもざらなので、
モノクロの自家現像はオススメです。
現像の仕組みについて
かなり簡単に説明させていただきますが…
1.フィルムの光に当たったところをハロゲン化銀→銀にする
→現像液
2.未感光のハロゲン化銀を溶かして無くす
→定着液
残った銀が、像になる…といった仕組みとなっています。
前提
必要なものについて
全て、私が実際に使っているものを紹介します。
他サイト様など、古い記事では絶版になっている機材が紹介されている事もありますが、
こちらは2023年にそろえた物なので、まだ普通に買えるはずです。
とりあえず並べておくので、必要に応じてご用意ください。
※上から読めばわかるような記事にしているので、内容はここで覚えなくてもOKです。
A.現像タンク【必須】
自分が使いやすいものが良いのですが、初心者には以下がオススメです。
とにかくフィルムを巻くのが簡単で、最初にリールに差し込めさえすれば、後は簡単に入っていきます。
35mmであれば、最大3本同時に現像できます。
B.ダークバック
一部の人は、部屋の電気を消して、さらに布団の中とかで作業をする人もいるようですが、不要な感光のリスクを減らしたりホコリの付着を防ぐためにも、用意したほうが良いです。
C.フィルムピッカー
Matin Film Leader Retriever FILM PICKER for 35mm Cassettes Safe Films Extractor by MATIn
35mmフィルムの場合は、パトローネからフィルムのベロを出す必要があります。
その際に使いますが、ガムテープなどをうまく使って出す人もいるようです。
最悪、ダークバックの中で破壊してもOK
D.現像液【必須】
値段的にはこれ一択。汎用性も〇
ミクロファインを購入する方もいらっしゃいますが、こだわりだしてからで良いと思います。
大き目のヨドバシカメラなどでも手に入ります。
E.停止液
専用品は不要です。
適度に酸性であれば、現像を停止できるので、この粉から水溶液を作ります。
※レシピは後程記載します。
100円ショップのクエン酸でもOK。
停止液がもしなければ、ふつうに流水で洗い流すだけでも良いです。
F.定着液【必須】
FUJIFILM 黒白フィルム・印画紙手現用定着剤 スーパーフジフィックスL 3/4ℓ用 SUPER FUJIFIX-L 3L/4L
こちらを使っています。
未露光部のハロゲン銀を除去するために使います。
G.水洗促進剤
富士QWを使っています。
Amazonで売り切れになっていますが…
ヨドバシなどには置いてあるかもしれません。
※なくてもOKです。その場合、水洗時間を長めに取る事をおすすめします。
H.水滴防止剤
フィルムに水滴の跡がつかないようにするもの。
界面活性剤なので、恐らく食器用洗剤などでも流用できると思います。
最悪なくてもOK
I.温度計
これで十分です。
温度変化に敏感なデジタル温度計をお勧めします。
薬液の温度管理に重宝します。
J.薬液保管用の容器
現像液用と定着液用の2つは、最低でも必要だと思います。
※光が当たらないように保管する必要があるため
それ以外の薬液は、正直ペットボトルでもOKです。
(私もペットボトル管理してます)
K.漏斗、計量カップ、薬液保温用のケースなど
漏斗
薬液をタンクに出し入れするときに必須
計量カップ
薬液を溶かすときに必須
※現像液は劇物です。食品で使う物とは別にした方が安心です
このあたりなど。
温度管理にあると便利です。
現像レシピについて
現像は薬品を使って、アナログに化学処理をするものになります。
特にモノクロフィルムは、フィルムごとに特性があるため「現像のレシピ」が必要になります。
インターネットを探せば大体はどこかにありますが、
無くても失敗覚悟で適当に現像する事はできます。
※今回私が用意したのは、以下のフィルムです。
(私が現像したのは120版ですが、現像方法は同じです)
こちらのフィルムであれば、同じ秒数で処理すれば問題ありません。
現像手順
タンクが凹んでいるのは、8カ月くらい放置したせいです。
今回は、8カ月前の薬液達をそのまま使っていこうと思います。(あまりよくない)
0.【前日作業】各種薬液を作成しておく
前日までに、以下の薬品を溶かしておきます。
※買った後、お湯で溶かして一日程度放置する必要があります。
※薬液の安定のために前日作業としておりますが、別に当日でも問題無いとは思いますが保障はいたしません。
D.現像液(SPD)の準備【必須】
1Lのお湯(20°C~40°C)度に攪拌しながら溶かします。
※そこそこ臭いので注意
E.停止液(クエン酸溶液)の準備
水1Lに15gのクエン酸を溶かします。
※そこまで厳格で無くても良いですが、濃すぎるとフィルム面を痛める事があるようです。
個人的には、一瞬潜らせるだけなので、あまり気にしなくてもOK。最悪なくてもOK。
F.定着液(スーパーフジフィックス)の準備
水と1:2の割合で割るだけです。
1L作るなら、
・スーパーフジフィックス:330ml
・水:660ml
程度を混ぜればOK。
以下、前日である必要はありませんが、合わせて準備しておくと現像時にスムーズでしょう。
G.水洗促進剤(富士QW)の準備
2Lの水に溶かすだけです。
いい感じの青色になります。
H.水滴防止剤の準備
1Lにキャップ1杯分を入れるだけ。
無色です。
1.フィルムを現像タンクへ入れる
「B.ダークバック」の中で、撮影済フィルムを「A.現像タンク」へ入れます。
※35mmフィルムの場合は、事前に「C.フィルムピッカー」などでフィルムのベロを出しておきます。
※ダークフィルムの中には、「フィルムを取り出して現像タンクへ入れる」工程で必要なものをすべて入れて作業してください。
このあたり、需要があれば詳しく書こうと思います。
「A.現像タンク」へ格納できたら、後はすべて明るい場所で作業できます。
2.薬液の温度を20°Cにする
20°Cあたりの水(お湯)を張ります。
温度管理が必要なのは、
「D.現像液」と「F.定着液」のみです。
細かく温度を見る必要があるのは、「D.現像液」のみで、
「F.定着液」はある程度適当でもOKです。
基本的には、現像液の温度だけみつつ、
・夏はバットに氷を入れて調整
・冬はお湯を足して調整
して、20°C前後になるように調整します。
なお、フィルムの前浴をする場合は、同じバットに1L程度、計量カップに分けて入れておきます。
これも、大体20°C前後であればいいです。
(個人的には前浴した方がいいです。理由は後述します)
3.フィルムの前浴
フィルムの種類にもよると思いますが、ロモグラフィーのフィルムにおいては、個人的にはした方が良いです。
理由は、以下の画像を見てください。
御覧の通り、フィルムの保護剤がかなりの量入っているため、いきなり現像液を入れると現像液に緑色の物質が入ります。
現像液の劣化につながるため、まずは前浴で現像に不要なフィルムについた層を剥がす目的があります。
3-1.水を入れて攪拌(蛇口から直接でOK)
水を入れて攪拌します。
攪拌とは…
攪拌の概念は人によりますが、
まず底を数回叩いて、フィルム面についた泡を取り除き…
〇現像タンクについている棒を使って左右に回転させる
または
〇現像タンクそのものを逆さにして戻して…を数回繰り返す
操作を指します。
フィルムの間を通る薬液を均等に行きわたらせるために行います。
3-2.水を入れて攪拌(蛇口から直接でOK)※2回目
水を入れて攪拌します(2回目)
3-3.20°Cの水を入れて攪拌(先ほど計量カップで温度調整していたもの)
最後の前浴では、現像タンク内の温度を現像液に近づけるために、近しい温度の水で攪拌します。
これで、現像タンク内が20°Cへ近づきます。
4.現像工程(現像液20°C 要確認)
温度計で軽く混ぜても、20°C付近であまり変わらなければ、その温度で安定しています。
4-1.タイマーを6:30でセット→スタート
キッチンタイマーでも、スマホのタイマーでもいいですが、6:30秒をセットします。
現像液を流し込む準備ができたら、タイマースタートです。
4-2.現像液を素早く現像タンクへ流し込む
現像液を現像タンクへ入れてください。
目標は10秒程度ですが、難しければゆっくり作業しても大丈夫です。
4-3.攪拌する(タイマー 6:30~6:00)
攪拌とは…
まず底を数回叩いて、フィルム面についた泡を取り除き…
〇現像タンクについている棒を使って左右に回転させる
または
〇現像タンクそのものを逆さにして戻して…を数回繰り返す
※フィルムの間を通る薬液を均等に行きわたらせるために行います。
4-4.現像タンクの底を叩く ※気泡取り(タイマー 6:00)
現像タンクの底を手で数回叩く。
あまり強くたたく必要はないが、フィルムについた気泡を取ることが目的なので、それなりの力で叩く。
4-5.攪拌して現像タンクの底を叩き50秒放置(タイマー 5:30)
4-6.攪拌して現像タンクの底を叩き50秒放置(タイマー 4:30)
4-7.攪拌して現像タンクの底を叩き50秒放置(タイマー 3:30)
4-8.攪拌して現像タンクの底を叩き50秒放置(タイマー 2:30)
4-9.攪拌して現像タンクの底を叩き50秒放置(タイマー 1:30)
4-10.現像液を元のタンクへ戻す (タイマー 残り10秒)
戻すときの事を考えて、あらかじめ漏斗を差しておくと良い。
5.停止工程
現像タンク内を酸性にすればいいだけなので、温度管理は不要。
5-1.タイマーを1分で設定
5-2.停止液を現像タンクへ入れる
5-3.攪拌を続ける(1分間)
この時点で、現像は停止されました!
以降は、時間をあまり気にせず、多少ざっくりと作業しても大丈夫です!
5-4.停止液をタンクへ戻す
こちらも、事前に濯いだ漏斗を入れておくと良いが、慌てる必要は無い。
化学反応はここで一旦停止しているので、10分くらい休憩してから停止液をタンクに戻しても大きな影響は無いはず(保証はしません)
6.水洗(やらなくてもOK)
してもしなくても良いですが…
なるべく定着液の劣化を防ぐために、一度水道水をタンクへ入れて、攪拌して流しています。
効果があるかは分かりません。
7.定着工程(タイマー 5:00→0:00)
7-1.タイマーを5分で設定
7-2.定着液を現像タンクへ入れる
7-3.攪拌を続ける(5分間)
7-4.定着液をタンクに戻す
7-5.フィルムのベースの色が透明になっている事を確認
このように、写真が写っていないところが透明になっていればOK。
もし透明になっていない場合は、焦らずもう一度定着工程をやってください。
(とりあえず、1分ずつくらい様子を見ながらで良いと思います)
現像(像を出す作業)自体はこれで完了です!が、
このままではフィルムのコンディションがよろしくありません。
以下の工程は、フィルムを洗浄したり、水滴がつきにくくしたり…といった作業になります。
8.水洗工程
あとは、どれだけ時間をかけても、現像も定着も終わっているので問題ありません。
ゆっくり落ち着いて作業しましょう。
8-1.タイマーを12分にセット (タイマー 12:00)
8-2.水道水を入れて攪拌 (タイマー 12:00)
8-3.水道水を入れて攪拌 (タイマー 11:30)
8-4.水洗促進剤(QW)をリールが隠れるくらいまで入れる(タイマー 11:00)
8-5.水洗促進剤(QW) を元のタンクに戻す(タイマー 10:30)
8-6.流水で流す(タイマー 10:00→0:00)
流水でちょろちょろと水が出るくらいで流しておきます。
水洗促進剤を使った場合は10分程度でOKです。
9.乾燥・固定
後は、現像タンクからフィルムを出して、風呂場などに吊るします。
私は100円ショップのクリップと養生テープを使って適当につるしています。
これで、数時間寝かせれば、完成です。
吊るしたまま、4枚か5枚毎にハサミで切って、適当なファイルに挟みます。
10.スキャン(マクロレンズで撮影)
後ろに白い写真を表示したiPadを、最大光度で置いています。
そのままだとあれなので、iPadにピンとが合わないように、無印かニトリの透明なケースについてくる蓋?がいい感じに光を透過するので、それを使っています。
120フィルムなので、この時点でもかなり鮮明に見えてうれしいですね。
後は、マクロレンズで撮影して反転すると…
こんな感じの趣がある白黒写真になります。
そう、最後は結局デジタル一眼カメラで撮影することになります。(あるいはスキャナーでデジタル化…)
最初からデジカメで撮れよ!と思う方もいらっしゃるかと思いますが、これは趣味です。
無駄で大変な工程を踏んだ先にある写真にこそ、きっと意味があると私は信じています(自己満足)
皆様も、ぜひ試してみてください。
コメント